ランニングACF測定と最適設計
ランニングACFの活用指針

音楽ホールや、音響を聴く部屋、車中、屋外空間は、流す音楽の特性に合わせて設計されるべきだといいます。そこでの音質が流す音楽のτe(自己相関関数の有効継続時間)に大きく依存しているからです。τeを求めるには「ランニングACF」測定を行います。

音楽と音場の関係

(1)部屋にあわせた音楽が聴きやすい

音楽に合わせて部屋を作ると、聴きやすい音のいい部屋が作れる。 講義室や会議室はスピーチのために、またオペラハウスなどは声楽のために設計する必要がある。すべての音楽にあわせた部屋はありえない。

  • 響きのいい風呂場は歌うにはいいけれど、速い会話には適さない。
  • ロックなど早い曲は、残響が少ないほうが聴きやすい。
  • クラシックは響いたほうがいい。
  • (2)ステレオのほうがモノラルよりも聴きやすい
    ステレオは音がいい。 また、モノラルのように両耳に同じ音が入ると、耳から方向や、位置情報そ の他が得られないので、違和感がある。

    (3)演奏家は場所や曲目に応じて聴きやすくなるように演奏方法を変える
    歌い方も変わる。部屋の響きを、歌い方で補い、聞き手に心地よい響きを与えようとする。残響の少ない部屋で歌わされると無理な歌い方をするから苦しい。

    τe(自己相関関数の有効継続時間)と音響パラメーターの科学的関係

    1. 音源自身の残響成分は τe(自己相関関数の有効継続時間)の6倍である。残響成分の60dBA減衰する時間は、τe10dBA減衰する時間の6倍である。

    2. 好ましい残響時間は、音源自身の残響成分の4倍、τe(自己相関関数の有効継続時間)の23倍である。

    3. 好ましい初期反射音の到達時間⊿T1は音源信号の自己相関関数および、反射音の総合振幅Aに関連している。

    単一反射音の場合   

    そこでのプリファレンス(個人差)

    人によって、音楽の趣味が違うといわれますが、個人差は主に初期反射音の到達時間⊿T1や、残響時間TSUB60のような時間的ファクターに見られます。両耳間相互相関度も遅れ時間1mmsec以内の最大値IACC(低いほどいい)には現れないことがわかっており、LLの個人差は一人一人の聴力の違いが原因しています。

    歳をとって耳が遠くなれば、大きな音でゆっくりした音楽が好きになります。それらの音がよく聞こえる環境はよく響くホールになっていきます。⊿T1やTsub60は大脳の時間的活動の個人差により好みが分かれます。

  • 時間的な概念は、人によってまちまちです。
  • 都会よりも田舎の人のほうが、ゆっくりした時間感覚を持っています。
  • せっかちな人とスローな人がいます。
  • まとめ

    1. 音楽そのものが持ってる残響成分の4倍の残響時間を持つ部屋が望ましい。自己相関関数から残響成分をしらべるには(好みも関係するが)τeを4倍してやればよい。

    2. 好ましい初期反射音の到達時間は(好みも関係するが)τeより小さいか、それに近い数字。

    3. IACCを最小にする、初期反射音の到来方向は1kHzでは55°、2KHzでは36°である。

    4. 聴取音圧レベルの最適値はテンポの遅い場合で77~79dBA、速い場合は79~80dBAである。


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