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無響室とベルリン・フィルハーモニーホールの響きのちがい
(ピアノ曲測定2)

ピアノ曲測定1の続きです。

また、コンサートホール録音のCDは、カラヤンのピアノコンチェルト(ベルリンデジタル録音)を使用しました

 

 
計測日時 2002年11月16日
計測場所 東京都渋谷区
パソコン DELL INSPIRON 5000e
OS Windows 2000 Professional
測定分析ソフト DSSF3 英語版
テスト音源 piano2-03.wav (44.1kHz / Mono / 8sec / 690KB)
無響室のピアノ曲のランニングACF測定(RAの画面、前回と同じ)です。

SAでの計算条件です。

聴衆はコンサートホールでは楽器の響きに、ホールの響きをプラスしたものを、その曲の響きとして聴くことが出来ます。無響室ではそれに対して、部屋の響きが無いため、楽器自身の持ってる響きしかありません。ここで、前回と同様に、まず無響室録音のピアノ曲のランニングACF分析を再掲します。

ピアノ曲を0.01秒の積分時間で、5/1000秒ステップで、再分析するための計算条件です。

積分時間0.01秒は「日本語音声の分析2」から行っている時間軸の解像度を高めた分析方法です。この5個のグラフの最初のグラフΦ(0)は音圧レベルを0.01秒間隔ごとの平均値を求めています。

無響室は、響きの全く無い、実際の世界とは大きく異なる世界です。

通常の場合、ピアノは、ピアノそのものの弦や、共鳴版、箱などが、コンサートホールなどの響きを加えて、美しい音を作り、私たちを楽しませてくれます。無響室のピアノの音は響きがないためピアノの音がそのまま冷たい音を鳴らしています。

 

べラネックは「How They Sound CONCERT and OPERA HALLS」の32~33ページにかけて、Music-Acoustic Result としてΦ(0)のグラフのピアノのキーひとつひとつの減衰(Decay)について解説しています。

残響時間 (reverberation time)と、残響音と初期反射音の音圧レベルの割合
ratio of loudness of early sound to that of reverberant sound and the music itself

通常ピアノの減衰は最初の I 楽器の音の減衰の傾き(decay of the instrumental sound )と、次の R 部屋の音の減衰の傾き ( decay of the room sound) との組み合わせです。

Chart illustrating the interrelations among speed of music, reverberation time, and ratio of loudness of early sound to that of reverberant sound, and the music itself (tempos are identical). I is the decay of the instrumental sound and R is the decay of the room sound.

この無響室録音は I と、R の傾きが当然明確ではなく I の傾きのみです。

Φ(0) 音圧レベルのグラフをY軸の音圧レベルと時間軸で、それぞれ0.2秒後から1秒までの間を拡大表示してみました。ピアノのキーを弾いたときと、音の減衰状況が測定されています。

測定開始後0.2秒のピアノの1タッチについて拡大してみました。ここではY軸の目盛は0.5dB単位、X軸の目盛は0.01秒単位です。

無響室のピアノの響きは、時間軸と音圧レベルの両方を拡大しピアノの響きの部分をさらに、よくわかるようにしました。もし一般的なホールなどで、このいピアノ曲が演奏された場合には部屋の響きがここに加わりますので、キーを弾いたときの、音圧レベルの時間あたりの減衰の様子が変化すると考えられます。

無響室と比較する意味で、コンサートホールにおける「グリーグ ピアノ協奏曲 イ短調 作品18」のベルリンフィルの録音です。

SAで比較する上で同じ計算条件で再計算させます。

 

ベルリンの場合にはピアノの減衰は最初の I 楽器の音の減衰の傾き(decay of the instrumental sound )と、次の R 部屋の音の減衰の傾き (decay ofthe room sound) との組み合わせがはっきり出ています。I の傾きと、R の傾きです。

無響室録音では0.285秒後に0.005秒後に音が3dB近く下がっています。すべて弾かれてすぐ音が下がります。下図のベルリン録音では4.25秒後のピアノが弾かれた後0.005秒後には0.1dBしか下がっていません。これは無響室に比べて初期反射音の音圧レベルが大きいためです。I の傾きは、音のピークから、初期反射音の音圧レベルへの傾きになっています。Rの傾きは部屋の音の減衰の傾き (decay of the room sound) そのものです。

ベルリン録音の分析結果です。先頭部分はシンフォニーです。4秒後からピアノソロが始まっています.

 

April 2003 by Masatsugu Sakurai


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