| Japanese | English |

リスニングルームの初期反射音、残響時間と目標値の分析
(オーディオ測定レポート3)

前回は初期反射音の分析を行いました。

測定対象の音の部屋の中での挙動は、部屋の中で音が放出されると、その一部は直接聞き手に進みます(直接音)。進行する間に逆2乗法則に従うレベル変化を受けます。もっと多くは最初どれかの反射面に進み、反射した後、多くは数回の反射をして、最後に聞き手に到着します。その間に拡散、吸収、反射、屈折、回折のような変化のため、ある周波数では、他の周波数より、信号の減衰が多くなります。このような音を聞くのは、音を一度聴くのとは大きく違います。(「サウンドシステムエンジニアリング」ドン・デイビス著)

 
神戸オルビスの浮雲と、多面体無指向性スピーカー
DSSF3と、マイクアンプ、パワーアンプなど測定機材

下図は、神戸オルビスホールの測定データです。オクターブバンド500Hz帯のインパルス応答です。リスニングルームとは比較にならないくらい長い直接音や、反射音の到着時間です。直接音と、反射音がわかりやすい例です。この場合は反射音の到着時間を10msec以上として設定されている例がわかりやすいと思います。実際このような測定結果になるために、設定を直接音が到着してから10msecは無視して、次の振幅の最大を初期反射音の到着時間としています。このホールの測定時での500Hzでの残響時間は0.8秒です。DSSF3のRAでつぎのWAVEファイルを取り込めば、同じ結果が表示されます。

WAVファイル: audio3.wav (48kHz / Stereo / 1.365sec / 256KB)



同じく4kHz帯でのインパルス応答です。さすがにコンサートホールなので4000HzでτIACC=0で、IACCが0.28 (小さいほど優れている)は非常にいい数値です。使用目的が違うので比較になりませんがリスニングルームはほぼ1でした。部屋というより、楽器のように作ってあるからです。


同じく16000HZ帯のインパルス応答です.これは多面体の測定用無指向性スピーカーを使用していますから、インパルス応答が良好なS/Nで取れています。OMNI5の例とは全く別次元ですが、500HZから4000HZまでの重要な帯域の測定には「オーデイオ測定2」の測定結果で明らかなようにOMNI 5でも充分です。


測定用無指向性スピーカー

▼ SPL(サウンドプレッシャーレベル:音圧レベル)

コンサートホールで最適音圧レベルは、速いテンポの曲は79〜80dBA、遅い曲は77〜79dBA。(「コンサートホール音響学」 安藤四一著 P72)

▼ 冲1(第一初期反射音)の最適時間は初期反射音の振幅と、演奏する音楽のτeにより決まる一般的な値は下表を参照してください。

冲1はτeより少し短い時間です。τeより長いとエコーデイスターバンス(直接音と反射音の分離)がおこります。短いと広がり感が減少したり、反射音が干渉して音に色付け(カラーレーション)がされたりします。

第二反射音の遅れ時間はτe の1.8倍の時間(msec)が最適とされています。

【参考】
  τeの範囲 最適残響時間 Tsub60
スピーチ 10〜40msec 0.23〜0.92秒
声楽 20〜60msec 0.46〜1.38秒
管弦楽 30〜80msec 0.69〜1.84秒
パイプオルガン 0〜170msec 2.3〜3.91秒

表からわかるように最適残響時間はτeを約23倍したものです。以上は「コンサートホール音響学」(安藤四一著)73ページからの要約です。

今回取り扱う残響時間とは定常状態の音が、入力を切られた後、60dB減衰するのにかかる時間です。 これはRT60です。これに対してTsub60 残響時間とは、初期反射音が到達してから -60dB 音圧レベルが下がるのに要する時間です。考え方は部屋の中で音楽を聞く人の位置での人間が聴く音の残響の時間です。

このシステムでは、Tsub60の計算をシュレーダー積分で行い、残響カーブを計算し、60dB減衰ではなく最初のある期間(10dB減衰時間可変)の残響直線を使って、残響時間を計算する自動ロジックを使用します。

設定画面

再設定画面です。設定はいろいろと考慮する必要がありました。すこし問題はありますが、総合の残響時間は設定を変化させても、おおむね0.28〜0.29秒で落ち着いています。

SAで再計算させました。

それを使用すれば、1オクターブバンド周波数の残響特性、1/3オクターブバンド周波数の残響特性が自動計算可能です。ここでは1オクターブ分析を行いました。

全周波数、A特性の残響分析

「A特性」は人間の聴覚の周波数特性を考慮しているものです。グラフから読むにはそのとき、第一初期反射音の到着時間は緑の線です。ノイズの補正区間の最後の50%の時間をノイズとして、計算に使用していないのが赤い線です。残響時間には、こちらを使用しています。設定で10dBと指定したので、10dBを直線近似して、-60dBのと交差する点の最初の10dB下がる場所と原点もしくは2箇所の点を結び、直線を引きー60dB下がったX軸の値を読みます。実際に今回の場合表から読むと、295msec−14msec=281msec。約0.28秒です。

コンピュータの表示はALL(A)の行に表示してあります。これは1/3オクターブバンドのそれぞれの周波数ごとの特性に対して、全周波数のA特性の意味です。今回は0.29秒でした。

1/3オクターブバンド500HZ帯、A周波数特性の残響分析

残響を測定する周波数は500Hzを用います。残響時間は0.21秒でした。周囲の周波数領域の表示は1kHz帯は0.31秒でした。ここでリスニングルーム、試聴室、AV鑑賞の部屋の残響時間の推奨値を載せておきます。

 
  6畳(22.5u) 12畳(50u) 18畳(80u)
リスニングルーム 0.5 0.51 0.6 (Beronek)
試聴室 0.3 0.32 0.37 (Beronek)
AVシアター 0.14〜0.25 0.15〜0.26 0.16〜0.28 (Lucas)

May 2003 by Masatsugu Sakurai