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I 音、II 音を音響的に測定分析
(心音測定3)

2004年7月20日 1 加筆開始

この2003年の分析は、心弁の閉じる音の動作タイミングと、その動きの分析でした。そんなことを思い立ったのは心臓の動きや、血流の流れやばねが利いた心弁の材質や、閉じる音まで実際に自分の耳で聞き取れたからです。

2004年7月20日 1 加筆終了

ここでは、I 音は 僧帽弁と三尖弁の閉鎖音であり心臓収縮早期の音。II 音については 大動脈弁と肺動脈弁の閉鎖音であり、収縮終期におこるわけですから。それらの動作タイミングと音質の分析を行ってみます。

下の画像は、Φ(0)音圧レベルの時間変化を表すグラフです。縦軸はdBを表しています。コンピューター上での最大音圧レベルを0dBとして、マイナスで表されています。横軸は時間軸で、1目盛り 100msecです。測定経過後4.25秒をピークとする、 I 音、4.5秒をピークとする II 音、同じく5秒をピークとする I 音、5.3秒をピークとする II 音が計測されています。

画像の下の数値表に着目すると、I 音の音圧レベル上のピークは測定開始後4.24秒ですからそこが反転させてあります。そこはτeは7.123秒という短い数字です。これは音の響き成分が短いことを意味します。τ1は3.08msecで、その強さφ1が0.08とよわいので、音量はピークですが、弁の動きを表してはいないようです。周囲のピッチの強いものを探してみると、ピーク直前の4.235秒時に、φ1が1に近いものがあります。

このデータはτ1が0.07という、周波数としては14000Hzに匹敵する高い音であり、かつφ1が1に近いピッチの強い明確な音が計測されています。

これは僧帽弁の閉じる音です。これは実際に聴診器で音を聞いても、弾けるような、バネの利いた、閉じる音のようです。僧帽弁は肺から酸素を含んで送られてきた血液を肺静脈を通じ左心室に満たし、左心房の場所で閉じます。測定開始後4.235秒の点です。血液を全身に大動脈で送るために、左心室が収縮したときに、血液が肺に逆流しないための逆流防止の役割をします。その直後、血液の大動脈に流しだされる「ドクっ」という音が続きます。血液の流れは330Hzの音の高さです。これが脈拍と同期が取れる音が、I 音といわれる理由のようです。ちょうど僧帽弁の閉じる30msec後に三尖弁の閉じる音が続きます。測定開始後4.265秒です。これは全身から送られてきた、2酸化炭素を含む血液を肺に送るために全身に逆流させないための右心房の三尖弁を閉じる音です。その後、血液は肺動脈を通じて肺に送り出されます。測定開始後4.47秒から4.56秒までで、その送り出しをそれぞれ中止するための大動脈への出口を止める大動脈弁を閉じ、肺動脈への出口の肺動脈弁を閉じます。つまりこれまでの I 音から II 音への間は心臓が収縮して、血液が絞りだされるときです。反対に、この後 II 音から I 音への間は心臓が膨らんで血液をためる時です。

測定開始後 4.235秒のACF 250msec 遅れ後の自己相関の大きな部分は、ちょうど II音との相関の大きな部分です。もっとも II 音の分析はあとで行いますから、この場はもっと短い遅れ時間の部分、つまり30msecくらいまでの I 音の原因となる、僧帽弁の閉じる音の音響分析として、そのタイミングでの精密な音圧レベルの変化から、自己相関からの拡張パラメーターとしてτ1、φ1、τeなどの情報を使用して分析します。

遅れ時間30msecくらいに限定して、ACFを時間軸上にズームしてみました。これは I 音の原因となる、僧帽弁の閉じる音の音質をあらわしています。音声認識の時と同じやり方で、ちょうど閉じるタイミングでのACFのグラフの、自己相関の山のピークから代表的な周波数成分をフォルマント周波数と同様な読み取り方で読み取っています。それにより僧帽弁の閉じる音を周波数成分にしてみます。

 
0.07 14000 Hz
2.52 400 Hz
8.07 125 Hz
10.11 100 Hz

測定開始後 4.26秒後の5kHzの強いピッチの音の周辺のズームです。

遅れ時間30msecくらいに限定して、ACFを時間軸上にズームしてみました。これは I 音の原因となる、2番目三尖弁の動作音の音質をあらわしています。

 
0.23 5000 Hz
3.7 280 Hz
9.3 100 Hz
11.7 90 Hz

一番目の音よりもいくらか低い音質です。

測定開始後4.47秒から大動脈弁が閉じだして、4.48秒で閉じ、その音は4.485秒後まで響いています。動作開始は800Hz(4.47)から200Hz(4.475)まで音を下げ、動脈を閉めた瞬間、4.48〜4.485秒に5kHzの強いピッチの周波数成分を持っています。測定開始後4.51秒から肺動脈弁が閉じ始めます。4.53秒で2kHzの強いピッチの周波数成分を持った音があります。これは肺動脈弁の閉じる音といえます。

II 音の発生の元となる、弁の動作音です。測定開始後4.48秒でピッチの強い、共鳴周波数成分の高い音質の音が発生しています。こちらは I 音に比べて、発生時間が長いです。弁の動きも遅いようです。遅れ時間30msecくらいに限定して、ACFを時間軸上にズームしてみました。これは II 音の原因となる、最初の弁の動作音の音質をあらわしています。

 
0.23 4000 Hz
3 330 Hz
5.5 180 Hz
8.5 120 Hz

この解析は、10msecの積分時間ですので、音圧レベルなどは10msecの平均になっています。また解析は5msecごとに、6.52秒行っていますから、1304データ解析されています。そして多次元に、音圧レベルだけではなく、τ1、φ1、τeなどの音響パラメーターも同時に分析できるため心音から、心臓の動きを予測することができます。音圧レベルだけでは、たとえば僧帽弁の動作時間が正確にはわかりません。しかしτ1は音の高さを表し、重要なφ1はピッチの強さを表していますから。φ1が小さい数字のときではなく、τ1が高くて、特に強いφ1の時間に、弁が閉じたと想像できます。

生体音響で、心臓を弁の単位で動作タイミングと動作音を測定しようとすると、心臓の弁が閉じる音は、今までの積分時間10msecランニングステップ5msecより、もっと時間分解能が高い分析を必要と感じました。そこで今回はじめて積分時間2msec、ランニングステップ1msecで再計算させてみました。

この分析ですと、この6.52秒のデータで、6520の分析結果が出ることになります。音圧レベルは2msecの平均です。このレベルであれば弁の閉じる音が一番大きくなりました。そのわけは平均時間が長いと、パルス製の音は発生時間自体が短いので長い時間平均すると小さな音になってしまいます。いままでの積分時間10msecのときには、音圧レベルでいえば、ほとんど大きな値をもたず、どちらかといえば血流の大きな音の山の間の谷間に隠れていました。高周波な成分と、τeが短い特徴点であることから、主に分析してきました。ところが今回の分析では、最も音圧レベルが高いところが僧帽弁になっていますから僧帽弁自体の動きを調べるには適しています。調べたい対象の音が一番大きくなるような、計算条件の指定は、測定の基本かもしれません。

赤い点は測定経過時間4.239秒後のものです。時間軸は1目盛り 1msecです。20000Hzの僧帽弁の閉じる瞬間を捕らえています。閉じる瞬間の心臓にあたる音は約8msecの時間幅を持ったパルスです。また、閉じきる前に約 4.22秒後から、4.235秒後まで約15msecの幅で200Hz、300Hzの周波数成分を持った音を立てています。これは血流を弁が妨害したときの音と思われます。この測定結果では、僧帽弁が閉じるのに要する時間はその両方の合計の23msecのようです。

赤い点は測定経過時間5.005秒後のものです。僧帽弁の閉じる若干前のようです。これでも6500Hzの音と、ここも約8msecに時間幅を持ったパルスです。

赤い点は測定経過後5.815秒後のものです。これも僧帽弁の閉じる瞬間です。

まだ動きが良くつかめなくわからないため、心音の分析はまだこれからです。今回は分析値を以上3つ紹介しておきます。心音のサンプル音をWAVEファイルでダウンロードして、DSSF3で同様に計算していただければ、このレポートと同じ結果が出すことができます。

2004年7月20日 2 加筆開始

この最後の積分時間0.002秒、でランニングステップ0.001の分析を、最新のDSSF3 バージョン5.0.5.6 DEV で行います。

計算条件は以下のように同じにして分析を行いました。

測定開始後4.239秒のところが、赤い点で表示されています。128倍のズームを行い、X軸上の1メモリは1msecです。またY軸は2倍のズームを行っています。こちらは、測定時間経過ごとの音圧レベルΦ(0)の時間変化がグラフ化されています。

ここは僧房弁の測定時間として4.22秒から4.233秒の血流の押し出す音と、4.233秒から4.242秒までの僧房弁が動く音、特に4.239秒で僧房弁が閉じた音と、これまでに分析しているところです。前回まで、画像が小さくて読みにくかったので、こちらは再分析しておきます。

こちらはτ1のグラフです。上のグラフと縮尺、表示位置共にそろえています。

これによると、4.239秒のポイントは、4.236秒からのτ1の延長とも見れるし、4.24,4.241 の前とも見れます。つまりここではDSSF3は、τ1として0.05msec を計算していますが。これはどうも閉じる弁の音を分析するにはもうすこし、時間解像度が高い分析を必要としているようです。

しかし、ここで、弁が閉じたりなにかが変化したのはこのグラフからは明らかです。ただ、これらの変化が、何に対応してるかはこれだけではわかりません。この図での赤い点は弁が閉じた音を含み、T音が一番音が大きな心拍である、僧房弁が最初に閉まる弁である。ということであれば、これは僧房弁です。

上のτ1のグラフで、赤い点4.239はτ1が最小、音圧レベル最大の特徴的な点です。測定開始より、4.219秒より4.239秒 4.256秒が、僧房弁の動きを分析したグラフです。4.239秒のWAVEの表示は、以下のようです。大体800msec間隔でT音が聞こえます。75の心拍数です。

X軸方向に512倍に拡大すると、一メモリが1msecです。青い帯の範囲は最初の赤線が区間の開始です。こちらが4.239秒です。後のほうは積分時間に合わせて2msecです。つまり、この2msecをFFT分析します。この近辺の最大振幅はこの図からも明らかなように、この区間に含みます。これで僧房弁の分析を終了します。この段階ではこれで充分です。

同じ分析を他の3つの弁に行えば、心音の心弁の動作にかかわる0.002秒の積分時間の分析は終了です。

2004年7月20日 2 加筆終了

 

 

April 2003 by Masatsugu Sakurai